転職して最初の冬、ボーナスが出ない、あるいは寸志だけというのはよくあることです。ただ「そういうものだから」で終わらせると、次の賞与がいつ満額になるのかも分からないままになります。
この記事では、賞与が法律上どう扱われているかを確認したうえで、自分の会社の答えがどこに書いてあるのかをはっきりさせます。相場の話ではなく、確認先の話です。
転職1年目のボーナスが出ないのは珍しくない

まず前提として、賞与を支払わなければならないという法律上の決まりはありません。労働基準法は賞与を「賃金」の一種として定義していますが、支給を義務づける条文は置いていません。
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
労働基準法 第11条(e-Gov法令検索/2026年9月3日閲覧)
賞与が「賃金」に含まれるというのは、支払うと決めた以上は賃金として扱われるという意味です。支給するかどうか、いくらにするか、誰を対象にするかは会社が決めます。
1年目が満額にならない理由は「査定の対象期間」

多くの会社は、賞与の額を一定の期間の勤務や成果をもとに決めます。この期間を査定の対象期間と呼びます。
対象期間の途中や、期間が終わったあとに入社した人は、その回の賞与では満額の対象になりません。在籍していなかった月があるためです。日割りに近い調整をする会社もあれば、寸志にとどめる会社、対象外とする会社もあります。
つまり1年目に出ないのは、評価が低いからでも会社の業績が悪いからでもなく、制度上そもそも対象期間に入っていないことが理由になっている場合がほとんどです。2年目以降は対象期間をまるごと在籍するので、そこで通常の水準になります。
自分の会社の条件は就業規則に書いてある
では対象期間や支給条件はどこで分かるのか。ここが本題です。労働基準法は、賞与の定めを置く場合に就業規則へ記載することを義務づけています。
四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
労働基準法 第89条第4号(e-Gov法令検索/2026年9月3日閲覧)
賞与は同法で「臨時の賃金等」に当たります。したがって賞与制度がある会社なら、その条件は必ず就業規則(または賃金規程)に書かれています。ネットの相場を探すより、自社の規則を開くほうが速くて確実です。
見るべき項目は次の3つです。
- 支給対象期間(いつからいつまでの勤務を見るか)
- 支給日に在籍している必要があるか
- 支給対象者の範囲(試用期間中や中途入社初年度の扱い)
就業規則が無い会社もある
ただし例外があります。就業規則の作成が義務づけられているのは、一定の規模以上の会社だけです。
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。
労働基準法 第89条(e-Gov法令検索/2026年9月3日閲覧)
常時10人未満の会社には、就業規則の作成義務がありません。規則が無い場合、賞与の条件は労働契約や個別の取り決めによることになります。この場合は口頭で確認するしかないので、後で食い違わないようメールなど文字が残る形で聞いておくのが安全です。
あお僕は3社目のSaaS企業に2025年10月に入社しました。年度の途中で入る場合、初年度の賞与は査定の対象期間に自分が入っているかどうかで決まります。金額を聞くのは気が引けても、対象期間がいつからいつまでかなら聞きやすいはずです。
入社前に確認する方法【労働条件の明示】
入社後に驚かないためには、契約の段階で確認しておくのが一番です。労働基準法は、労働条件を明示することを会社に義務づけています。
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
労働基準法 第15条第1項(e-Gov法令検索/2026年9月3日閲覧)
内定後に受け取る労働条件通知書がこれに当たります。賞与について書かれていなかったり、「会社の業績による」とだけ書かれている場合は、査定の対象期間がいつからいつまでかを質問してください。金額ではなく期間を聞く形なら、条件面談でも切り出しやすくなります。
求人票と実際が違ったらどうなる?
「賞与年2回」と書かれていたのに実際は支給されなかった、という食い違いもあり得ます。この場合の扱いも法律に定めがあります。
前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
労働基準法 第15条第2項(e-Gov法令検索/2026年9月3日閲覧)
明示された条件と事実が違う場合、労働者はすぐに契約を解除できます。ただし実際には、まず会社に確認するのが先です。求人票の記載が古いだけということもあります。
解除できるとはいえ、辞めれば収入が途切れます。まず労働条件通知書の記載と実際の運用を突き合わせ、それでも説明がつかない場合に、労働基準監督署などの窓口へ相談してください。感情的に辞める前に、書面を揃えるほうが選択肢は広がります。
ボーナスをもらってから転職するべき?
支給日に在籍している必要がある会社なら、支給日を過ぎてから退職を申し出るほうが金額は残ります。一方で、次の会社の入社日が決まっている場合は、そちらの都合が優先されることもあります。
判断材料は2つです。いまの会社の支給日在籍要件と、次の会社の初年度賞与の扱い。どちらも書面で確認できるので、感覚で決めずに並べて比べてください。
入社時期そのものの考え方は、次の記事でも整理しています。

転職1年目のボーナスに関するよくある質問
検索でよく見かける疑問をまとめました。
転職1年目はボーナスが出ないのが普通ですか?
賞与に法律上の支給義務はなく、査定の対象期間に在籍していない場合は満額の対象外になるのが一般的です。ただし会社の制度によるため、就業規則の支給対象期間を確認してください。
1年目のボーナスの相場はどのくらいですか?
相場を調べても自分の金額は分かりません。支給の可否と額は会社ごとの就業規則で決まるため、対象期間と支給対象者の範囲を確認するほうが確実です。
ボーナスの条件はどこを見れば分かりますか?
就業規則または賃金規程です。賞与は労働基準法の「臨時の賃金等」に当たり、定めを置く場合は就業規則への記載が義務づけられています(第89条4号)。
就業規則が見当たらない会社はどうすればいいですか?
常時10人未満の会社には作成義務がありません。その場合は労働条件通知書の記載を確認し、不明点はメールなど記録が残る形で質問してください。
求人票に「賞与年2回」とあったのに支給されませんでした。
まず労働条件通知書の記載と実際の運用を確認してください。明示された条件と事実が異なる場合、労働者は労働契約を即時に解除できます(第15条2項)。解決しない場合は労働基準監督署などの窓口に相談できます。
まとめ|相場を調べるより、就業規則を開くほうが早い
転職1年目にボーナスが出ない、あるいは寸志にとどまるのは、評価の問題ではなく査定の対象期間に在籍していないことが理由である場合がほとんどです。
そして自分の会社の条件は、就業規則に書かれていることが法律で義務づけられています。求人票、労働条件通知書、就業規則の3つを順に見れば、次の賞与がいつ満額になるのかまで分かります。
平均額を探して不安になるより、手元の書面を開くほうが速く答えにたどり着けます。




