「フルリモートに転職したのに後悔している」という声を見て、これから転職する側は不安になります。憧れて選んだはずの働き方で、なぜ後悔が起きるのか。
結論から言うと、フルリモートの後悔は個人の適性の問題というより、多くの人が通る道です。国土交通省の調査では、テレワークを続けたいと答えた人のうち7割以上が「週1日以上は出社したい」と回答しています。つまり在宅で働き続けたい人の多数派も、完全在宅そのものは望んでいません。
この記事では、後悔の中身を4つに分けたうえで、競合記事がほとんど触れていない「費用の自腹」問題を労働基準法の規定から整理します。そのうえで、選考中に確認しておけば防げる5項目まで落とし込みます。
フルリモート転職の後悔は「性格の問題」ではない

後悔の理由を「自己管理ができないから」「コミュニケーション能力の問題」と個人の資質に寄せる説明をよく見かけます。ただ、公的な調査の数字を見るともっと構造的な話だと分かります。
続けたい人の7割以上が「週1日以上は出社したい」
国土交通省は毎年「テレワーク人口実態調査」を実施しています。令和6年度の調査で、テレワークの継続意向がある雇用型テレワーカー(n=5,672)に希望する頻度を聞いた結果は次のとおりでした。
- 7割以上が、週1日以上の出社と組み合わせたハイブリッドワークを希望
- 実施希望頻度は週2日が最多、次いで週1日、週5日以上
- 半数以上が週3日以上のテレワークを希望
読み方に注意が必要です。この人たちはテレワークをやめたい人ではありません。「これからも続けたい」と答えた人の中での希望頻度です。それでも7割以上が「出社もしたい」と答えているという結果でした。
つまり、フルリモートで働き始めてから「たまには出社したい」と感じるのは、少数派の弱さではありません。テレワークを支持している層の中でも多数派の感覚です。
「後悔した」の多くは、想定と現実のズレ
後悔の正体は、フルリモートという働き方そのものより入る前に想定していた状態と実際の差にあります。通勤がなくなる分の時間が手に入るのは事実ですが、その代わりに減るものがあり、それを事前に見積もっていないと落差になります。
フルリモートの後悔は4つに分かれる
実際に語られる後悔を整理すると、大きく4つに分類できます。先に知っておけば、3つ目までは入社後の工夫で対処でき、4つ目は選考中に防げます。
① 雑談で入っていた情報が届かなくなる
「孤独」とまとめられがちですが、実務で効くのは寂しさより情報の入り方です。オフィスなら隣の席の会話や休憩中の雑談で自然に入ってきた話が、フルリモートでは誰かが意識して共有しない限り届きません。
結果として、判断に必要な背景を知らないまま作業していた、という状況が起きやすくなります。対処としては、雑談目的の短い定例を自分から作る、分報のように作業状況を流すチャンネルを持つ、といった方法があります。
② 評価されている実感が持てない
働いている姿が見えないため、成果が出ていても伝わっているか分からない状態になります。厚生労働省のテレワークガイドラインも人事評価に触れており、上司が部下に求める内容や水準をあらかじめ具体的に示し、評価対象期間中にも達成状況について共通認識を持つ機会を設けることが重要だとしています。
これは本来、会社側が整えるべき部分です。入社後に「評価基準が曖昧で不安」と感じたなら、自分の伝え方だけの問題ではない可能性があります。
③ オンとオフが切り替わらない
通勤が担っていた切り替えの役割がなくなるため、始業と終業の境目が曖昧になります。サボってしまう方向より、終わりが決まらず働きすぎる方向で問題になることのほうが多いです。作業場所を分ける、終業時にPCを閉じて片付けるなど、物理的な区切りを作るのが対処になります。
④ 通信費・光熱費が自分持ちになる
4つ目は、事前に調べられるのに見落とされやすい項目です。在宅で働けば通信費と光熱費は増えます。会社が負担するのか自分持ちなのかは企業ごとに違い、求人票には書かれていないことがほとんどです。
そしてこの部分には、労働基準法の定めがあります。次の章で詳しく見ます。
通信費・光熱費の自腹は防げる──労働基準法が定めていること
フルリモートで働くと、自宅の電気代・通信費・冷暖房費が上がります。月あたりの金額は働き方によりますが、これを誰が負担するかは会社ごとに違い、入社してから知るケースが少なくありません。
労働者に負担させるなら、就業規則に定めが必要
費用負担については、労働基準法にはっきりした規定があります。
労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項を就業規則に定めなければならない。
労働基準法第89条第1項第5号(厚生労働省「テレワーク総合ポータルサイト」費用負担に関するQ&Aより引用)2026年8月30日閲覧
厚生労働省はこの条文を受けて、労働者に費用負担をさせると定める場合は、就業規則(テレワーク勤務規程等を設けている場合はその規程)を作成・変更する必要があると説明しています。
あわせて「テレワークに関わる費用については、労働者に過度な負担が生じることは望ましくありません」とし、労使のどちらがどのように負担するかは、テレワークを導入する前に明確なルールを作り、労働者に丁寧に説明することが望ましいとしています。
だから、選考中に確認できる
ここが実務上のポイントです。費用負担のルールが就業規則やテレワーク勤務規程という文書の形で存在しているはずだと分かっていれば、面接や条件面談で「規程があるか」を具体的に聞けます。
「電気代は出ますか」という聞き方より、「テレワーク勤務規程で費用負担はどう定められていますか」と聞くほうが、担当者も答えやすく、曖昧な返答になりにくくなります。
在宅勤務手当があるかどうかだけでなく、金額・支給条件・対象範囲まで確認してください。「手当あり」と書かれていても月数千円で、通信費のみが対象というケースがあります。入社後に交渉するより、条件提示の段階で聞くほうが確実です。
フルリモート求人は減っている──出社回帰の実際
もうひとつ、後悔の背景として押さえておきたいのがフルリモート求人そのものが減っているという流れです。選択肢が少ないと、条件面で妥協した応募になりやすく、それが入社後の後悔につながります。
数字で見るテレワークの現在地
国土交通省の令和6年度調査から、全体の傾向を並べます。
| 指標 | 令和6年度の状況 | 意味するところ |
|---|---|---|
| 雇用型テレワーカーの割合 | 24.6%(前年度からわずかに減少) | 働く人の4人に1人。増加は止まっている |
| 雇用型就業者のうち直近1年でテレワーク年0日 | 84.4% | そもそも大多数はテレワークをしていない |
| 1週間あたりの平均テレワーク日数 | 令和2〜3年度の2.4日をピークに減少(週2日以上は維持) | 完全在宅ではなく出社との併用が標準 |
調査自体の結論も「コロナ禍を経て、出社とテレワークを組み合わせるハイブリッドワークが定着傾向」とされています。完全在宅が主流になったのではなく、週2日前後のテレワークが落ち着きどころになったというのが全体像です。
母数が小さいと、妥協が起きる
フルリモート求人が希少になるほど、「条件は完全には合わないが、フルリモートだから」という理由で決めてしまいがちです。働き方の条件が優先されて、仕事内容や評価制度の確認が後回しになる——これが後悔の典型的な入り口です。
後悔を防ぐために、選考中に確認する5つのこと

ここまでの4つの後悔のうち、入社前に潰せるものがはっきりしています。求人票では分からない部分を、選考の場で確認するための5項目です。
| 確認すること | なぜ効くか | 聞き方の例 |
|---|---|---|
| 出社の「実績」頻度 | 制度と運用は別。原則フルリモートでも月次会議で出社が続いていることがある | 「直近半年で、同じ職種の方は月に何回くらい出社されていますか」 |
| 費用負担の規程 | 労働者に負担させる定めは就業規則に書かれているはず(労基法89条1項5号) | 「テレワーク勤務規程では、通信費や光熱費の負担はどう定められていますか」 |
| 入社直後の条件 | オンボーディング期間だけ出社というケースがある | 「入社後しばらくは出社という運用はありますか。期間はどのくらいですか」 |
| 評価の見られ方 | 基準が曖昧だと「評価されている実感がない」に直結する | 「評価はどの期間で、どんな指標で見られますか」 |
| 方針が変わる可能性 | 全社方針の変更で出社に戻る例がある | 「働き方の方針が見直される予定はありますか」 |
5つとも、聞いて嫌がられる質問ではありません。むしろ働き方を具体的に確認してくる候補者は、入社後のミスマッチが少ないと見られます。答えが曖昧なまま進む会社のほうが、後で困ります。
あお転職活動をしていたころ、僕は費用のことまで頭が回っていませんでした。いま思えば「在宅勤務手当はありますか」ではなく「規程ではどう定められていますか」と聞けば、担当者も具体的に答えられたはずです。制度があるかではなく、文書があるかとして聞くのがコツだと思います。
面接で聞きにくいなら、先に口コミで当たりをつける
とはいえ一次面接からすべて聞くのは気が引ける、という場合もあります。その場合は在籍者・元在籍者の口コミや選考体験談で先に当たりをつけて、面接では確認したい1〜2点に絞るとやりやすくなります。
- 実際の働き方・出社頻度を在籍者の声で見る:転職会議(企業ごとの口コミが集まる。退会・有料プランの扱いは事前に確認)
- 選考でどこまで聞かれたか・答えたかを見る:ワンキャリア転職(選考体験談が中心で、面接の実際の流れが分かる)
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フルリモートが向く人・向かない人
ここまでの内容を踏まえると、向き不向きは性格より仕事の進め方の癖で分かれます。
- 報告や相談を文章で書くのが苦にならない
- 自分から情報を取りに行く動き方ができる
- 終業時刻を自分で決めて守れる
- 成果を数字や記録で示せる職種にいる
- その場の会話で仕事を進めるスタイルが染みついている
- 相談のきっかけを相手から作ってもらいたい
- 働いている時間で評価されたいと感じる
- 自宅に作業できる場所を確保できない
下の4つに当てはまるからフルリモートが無理、という話ではありません。ただ入社後に工夫が必要になる項目なので、対処を決めてから入るほうが後悔しにくくなります。週2〜3日出社のハイブリッドを選ぶという判断も、統計上はむしろ多数派です。
あお2回目の転職では「フルリモート」を企業選びの軸に置いて、エージェントとの初回面談でそう伝えました。その面談が3時間あって条件をかなり細かく詰めたので、紹介される求人が最初から絞られていたんです。軸を先に言葉にしておくと、後から条件で揉めにくくなります。
【体験談】営業職からフルリモートに変わって感じたこと

僕自身、もともと物流倉庫の出荷作業員で、そこから人材会社の営業を経て、いまは日系SaaS企業の営業としてフルリモートで働いています。前職からの年収は160万円ほど上がりました。
変わってよかったのは、通勤と客先移動に使っていた時間がそのまま戻ってきたことです。前職では移動だけで1日の相当部分が消えていました。
一方で、想定していなかったのが雑談で拾えていた情報が入ってこないことでした。前職の営業では、隣の席の会話から他社の動きや社内の温度感が自然に入ってきました。フルリモートだと、誰かが意識して共有してくれない限り届きません。だから自分から短い定例を作って、雑談の枠を確保するようにしました。
この記事で国土交通省の数字を最初に置いたのは、当時の自分が「こう感じるのは自分だけなのか」と考えていたからです。続けたい人の7割以上が出社も望んでいると先に知っていれば、対処に頭を使えたはずです。

フルリモート求人の探し方とサービスの使い分け

フルリモートは求人の母数が小さい条件です。だからこそ「数の多いところで絞る」か「リモート率の高い領域に最初から寄せる」かを決めてから動くほうが早く進みます。
| サービス | 型 | フルリモート探しでの使いどころ |
|---|---|---|
| リクルートエージェント | 総合型エージェント | 求人数が最大級。リモート条件で絞り込んでも候補が残りやすい |
| Geekly | IT・Web・ゲーム特化 | もともとリモート率が高い領域に絞って探せる |
| type転職エージェント | IT・Web中心の中途 | 首都圏のIT求人に強い。職種を決めている場合の相談先 |
| ミイダス | 市場価値診断 | 今の経歴でどのくらいの求人に届くか、応募前に目安を持てる |
| レバテックキャリア | ITエンジニア特化 | 開発経験がある場合。未経験からは対象外になりやすい |
| Green | IT・Web系転職サイト | 自分で検索して直接応募したい場合 |
今の状況から選ぶなら
- まず求人の母数を確保したい人:リクルートエージェント(総量が多いぶん、絞っても残る)
- IT・Web職で探すと決めている人:Geekly(領域がリモートと相性のよい業界に寄っている)
- そもそも自分が届く範囲を知りたい人:ミイダス(想定年収とスカウト傾向から現在地が分かる)
- 受ける会社の実態を先に知りたい人:転職会議(在籍者の口コミから出社の実態を推測できる)
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フルリモート転職のよくある質問
フルリモート転職は難しいですか?
求人の母数が小さいという意味では難しくなっています。国土交通省の令和6年度調査では、雇用型就業者のうち直近1年間にテレワークを1日もしていない人が84.4%を占め、1週間あたりの平均テレワーク日数も令和2〜3年度の2.4日をピークに減少しています。ただし減っているのは完全在宅の比率で、ハイブリッドまで含めれば選択肢は広がります。
フルリモートは「きつい」と言われますが本当ですか?
きつさの中身は主に、雑談で入っていた情報が届かない、評価されている実感が持てない、オンとオフが切り替わらない、の3つです。いずれも働き方の工夫で軽減できる種類のもので、性格の問題とは限りません。国土交通省の調査でもテレワークを続けたい人の7割以上が週1日以上の出社を希望しており、完全在宅に負荷を感じるのは少数派ではありません。
通信費や光熱費は会社が出してくれますか?
会社によって異なります。厚生労働省は「労働者に過度な負担が生じることは望ましくありません」としたうえで、労使のどちらがどう負担するかを話し合って決めるよう求めています。労働者に負担させる定めをする場合は、労働基準法第89条第1項第5号により就業規則に定めなければなりません。応募先にテレワーク勤務規程があるか、そこで費用負担がどう書かれているかを選考中に確認してください。
未経験からフルリモートに転職できますか?
職種によっては可能です。オンライン商談が前提の営業職やカスタマーサクセスなど、業務がもともとオンラインで完結する領域は入り口になりやすいです。ただしフルリモート求人自体が希少なため、「未経験可」と「フルリモート」を同時に満たす求人は数が限られます。ハイブリッド可の求人まで広げて探すほうが現実的です。
入社後に出社に変わることはありますか?
あります。全社方針の見直しで出社日数が増える例は実際にあり、国土交通省の調査でも1週間あたりの平均テレワーク日数は令和4年度以降減少傾向です。面接で「働き方の方針が見直される予定はあるか」を確認しておくと、想定外を減らせます。
フルリモート求人はどこで探せばいいですか?
求人数の多い総合型エージェントで条件を絞る方法と、IT・Webなどもともとリモート率の高い領域に特化したサービスを使う方法があります。母数が小さい条件なので、複数の入口を持っておくほうが選択肢を確保しやすくなります。
面接で出社頻度を聞くと不利になりませんか?
働き方を具体的に確認する候補者は、入社後のミスマッチが少ないと見られることが多く、聞くこと自体が不利になるとは限りません。ただし「出社したくない」という伝え方ではなく、「月に何回までなら対応できる」と許容範囲とセットで伝えるほうが話が前に進みやすくなります。
まとめ|後悔の大半は、入社前に確認できる
フルリモート転職の後悔は、働き方そのものが悪いというより事前に見積もれていなかった落差から生まれます。整理すると次のとおりです。
- テレワークを続けたい人の7割以上が「週1日以上は出社したい」と回答(国土交通省・令和6年度)
- 後悔は情報・評価・オンオフ・費用の4つに分かれる
- 費用は労働基準法89条1項5号で就業規則に定めが必要。だから選考中に規程を確認できる
- ハイブリッドが定着しフルリモート求人は希少化。数を打つより1件ずつ確認する
- 選考中に確認する5項目で、後悔の多くは入社前に潰せる
「フルリモートをやめたほうがいい」という話ではありません。望んだ働き方を選ぶ前に、何が減るのかを具体的に知っておく——それだけで、後悔と呼ばれるものの多くは事前の判断に変えられます。




